国とか民族性とか、文化のアニメ(前編)
色んなスマホゲーの広告があるけど、絵を見た瞬間にどこの国の開発か分かるのはなぜだろうか?
— アニメを語りたいおっさん (@Q7pHiMF63QjZV6m) 2020年10月24日
イラストレーターが日本人でも分かる。
ただ、台湾だけは割と外す…
まあ、こんなツイートをしてから、(はて、なんでだろう?)という事で、いろいろ考えた事を書いてみることにします。
日本はアニメ大国であるのは客観的に事実なんですが、昨今、中国・韓国・その他の国々も追随してきているのも事実。
中国のニュースサイトにも、頻繁に「なぜ中国のアニメは日本に勝てないのか?」みたいなテーマの投稿を見かけます。
日本は90年代後半、バブルが崩壊した辺りから、原価の安さを優先して海外での制作発注をし始めました。
それがいわゆる「三文字作画」と揶揄する言葉が生まれる原因にもなりました。
それは2005年あたりまで続いて、数々の伝説的作画崩壊アニメを量産しました。
しかし、それは決して「外国のレベルが低い」という訳ではありません。
これはアニメに限らず、色々な製造業がバブル・リーマン以降に外国に拠点を作ろうとして痛い目にあった共通点なのです。
出来ない人にやらせて出来なかった、という結果になったら、出来ない人が悪いんじゃないです。頼んだ人が悪いんです。
向き、不向きがあるのですよ。人には。
別に諸外国が絵が下手とかそういう話じゃありません。これは後天的な文化でもあります。
悲しいかな、ほとんどの人間は幼少期に受けた教育で感性がほとんど決定します。
例えば、虹の色を何色と数えるかは民族によって異なります。
2色だと教えられて育った人には2色にしか思えませんし、5色だと言われてお絵描きさせられてる子どもは5色以外のクレヨンを使わないです。
本当は7色なんだよ、と教える人も、単に7色と洗脳されているにすぎません。
実際は1677万色でも足りないでしょうが。
例えば老人で「ヴァ」が発音できないのは、自分が幼少期にその発音をしていないからです。
日本人にありがちなLとRの発音区別が出来ないのもそれと同じです。
音でも同じことが言えます。もともと無調・無拍子だった日本に初めてクラシック教育を持ち込んだ時、日本人のほとんどは(変な音…)としか思いませんでした。
そこから長い年月をかけて教育をした結果、西洋12音階を誰もが違和感なく受け入れるようになっただけなんですよね。
しかし、インドの22音階からすれば、私たちが普段耳にしている音楽ですら、虹を5色と言ってる人たちに見えるでしょう。
まあ、そんな感じで色々例に出して何を言いたいのかというと
そりゃ日本のアニメ見たことない人にアニメの絵を描かせたって、描けるわけがないでしょうよ。無茶言うなよ。
という事です。
浮世絵師にレンブラントっぽく描いて、って頼んで描けるわけがない。
そら江戸時代の人に人魚姫描かせたらアマビエになりますって。
当時2000年前後。
日本からアニメの発注を受けた人たちは、若くても30歳前後だったとしましょう。
その人たちの幼少期20年前と言えば1980年前後くらい。
中国は天安門事件前でようやく文化大革命の余韻も収まり始めた頃。外国の文化なんか遮断されてましたし、そもそもアニメなんて見てません。
韓国は軍事政権下で民主主義国家でもありませんでした。当然日本文化は禁止されて漫画もアニメも合法的には見れません。
それに対してイデオンとかヤマトとか見て育った日本の子どもが、同じテーブルに着いて「じゃ、アニメ作ってね。」と言われてどのくらいの差が出るでしょうか?
日本人なら30になってアニメを見なくなった大人ですら昔を思い出して(こんなんだった…よな…?)と手探りで作れるかもしれませんが。
今の3~40歳のイラストレーターに、「じゃ次回作はPixerみたいなフル3DCGやるんで描いてね」という依頼をするのと同義です。
あと「絵が描ける」と「アニメが作れる」って別ですからね。
で、業界自体が痛い目にあってようやく2010年くらいには「適材適所な使い方」というのを学習したのです。
それが「背景担当」ですね。
昨今のアニメを見ていても、背景を中国発注してる作品はよく見かけます。
写真を撮ってそれを送って「こんな感じで描いてね」とお願いすれば、けっこうなクオリティで描いてくれるようになりました。
自然はある程度似ている地域ですし、元の写真があればそれを奇麗に描ける絵描きはたくさんいますから。
ただ、これも微妙に注意しないといけない点があって、街並みを描くときにどうしても個性が出てしまったりしますw
動画とかでアジアの国々の街を見ると、なんの前情報が無くてもある程度は(あ~、あの辺の地域の街並みっぽいなぁ)ってのは分かります。それは歩道の広さだったり、舗装の材質だったり。
日本人だと当たり前のように描く電柱だって、海外の人は描かない人も多いでしょう。
日本アニメによくある、電柱の影に隠れて、みたいなシチュエーションでも、外国人が見たら「なんでそんな所に謎の棒が立ってんだよ、HAHAHA!」ってなるかもしれません。
だって、そんな所やこんな所に立ってるんですもの。仕方ない。
日本人だって(ここの電柱邪魔くせぇなぁ…)って思う事しきりです。
とまあ、こんな感じで、まだまだ歴史の浅いアニメと言えども、やはり長年の歴史と文化、そして教育の賜物の上に成り立ってるのです。
どこが上で下とかじゃなくて、それぞれの文化の上で創られる創作物である以上、海外発注にはそれなりのリスクがあるものです。
冒頭で引用した中国の嘆きだって、そんな一朝一夕で解決できる問題じゃないんです。少なくともスタート地点が数十年違うんですから、そんな簡単には埋められません。
しかし先達がいる以上、先駆者よりもショートカットは出来るものですよ。
という事で、次は最近のアジアアニメ作品について語ろうかな、と思ってます。