おっさん 『フランシュシュの歌』を語る その5
物語の中核からは外れているはずにも関わらず
絶大な人気のある2曲を考察&感想。
To my Dearest
作詞:古屋真/作曲・編曲:山下洋介
ゾンビィどもの間でも屈指の人気回の最後に流れた名曲。
ダンスのクオリティ・演出と相まって、何度聞いても中年の涙腺を絶対に殺すという鋼の意思を感じる1曲w
私は感想を書く間にどれだけ泣けばいいのでしょうか。もうメンドクサイから涙拭くのやめます。
歌詞
生ける者への鎮魂歌
鎮魂歌(レクイエム)は本来、死者の霊を慰めるための歌です。なぜなら死者は歌わないから。
しかしゾンビは歌います。
残されたたった1人の最愛の人のために。
残されて傷付き、荒れた魂を鎮めるために歌います。
これぞゾンビランドサガの真骨頂です。
ゾンビであるという設定を最大限に生かした1曲と言えるでしょう。
ずるいわっ!!
そんなん……泣くしかないやん……。
しかもリリィの野郎、最後まで笑顔で歌い切りやがって……天才子役かよ……。
そして追い打ちをかけるように、本編内で初めて歌の制作過程が描かれた回でもあります。
作詞者:古谷真さんには申し訳ないですが、これ、作詞:星川リリィ・豪正雄です。
↑好きなシーン。放送時verだと分かる人はメニアック!
葬式は死者のためにやるのではない、残された者に区切りをつけさせるための儀式だ、という話を聞いたことがあります。
確かにそういう側面はあると思います。それでも想いが残った人は、きっと心の底から死者の言葉を聞きたいと願うはず。その希望は世界中にあるはず。
千の風になって、も希少な「残された者への歌」としてヒットした理由が分かりますね。
つまりTo my Dearestはそのくらいのレア曲なのです。
ずっと先だと思ってた
人は死にます。
それが一秒後か何十年後かは分かりません。
ありがとうと言っておけば良かった、愛してると言っておけば良かった、そんな後悔などおかまいなしに人は死にます。
この胸に空いた隙間は埋まらないけど
大切な人を失って心に穴が空くという表現はありますが、それは死者も同じなのかもしれません。それでも与えてくれた想いが冷たい骸を暖めてくれる。
この歌詞は言葉こそ変えても、感謝と惜別(せきべつ)の念がほとんどです。
リリィはこの歌を通してありったけの「ありがとう」と「寂しいよ」をぶつけながら「さようなら」を告げようとしています。
それは残されたパピィに前を向いてほしいから。
リリィは自分が死んだのをパピィのせいだなんて微塵も思っていません。
だからこそ、自責の念に妄執してしまった父親を解放してあげたかったのでしょう。
もうね、天使は無性らしいから、リリィは天使でいいよ。
しかしまさおは天使じゃありません。
おっさん最後の「ちゃんと褒めてね」で涙腺決壊。
そうなのです。まさおが望んでいたことはたった1つだけなのです。
パピィがリリィを喜んで、褒めていた事は痛いほど分かってたんです。そして自分自身、それを願って子役をやっていたんだから、そこに文句は言わないんです。
でも、たった一言でいい。ちゃんと自分の方を向いて「まさお、偉かね」って言って欲しかったんです。
それが唯一の「無邪気な子供らしさ」を出した彼のわがままだった。
でもリリィはそのわがままを叶えられる機会は永遠に来ない事は知っています、だからこそ「夢でまた会えたら」と救いを与えたのだと思います。
……どこまで天使やねん(豪泣)
楽曲
ミュージカルチックな歌い方ですが、この喋るように歌うというか、歌いながら喋るというか、これの歌唱法に名前ってあるんですかね?私は聞いたことありません。
でも実はモチーフがさだまさしと聞いて大いに納得。
楽器構成的には風に立つライオンが一番近いかな?
さだまさし×佐渡裕 「風に立つライオン」 - YouTube
彼はこういう歌を歌わせたら日本屈指というか最強だと思います。彼の作品集を聞くと歌とはなんだろうとすら考えさせられますよ。
そしてインタビューで田中美海さんもフランシュシュの方々も口を揃えて言ってたのが「難しかった」です。
そりゃそうでしょう。なぜなら、この歌い方って歌として成立させるのが難しいんですよ。一歩間違えればただのセリフになっちゃいますから。
しかも田中さんはレコーディングの時に「もっと子役っぽく」と散々言われたらしいですね。
その子役っぽさ探求の1つがブレス(息づき)の多さだと思います。
肺が小さい子供は、当然大人みたいに長く歌う事はできません。だから歌詞としてのひとまとまりの途中で息を吸うのです。
大人がやったら「そこで息を切るな!」と怒られそうですが、それをあえてやる事で小ささを出す手法でしょう。(まあ、田中さんも比較的小柄な方ですけどねw)
楽曲的に好きなところは3:04からの「あなたのいた世界~」ですね。
この曲のサビはベースが下がってくんです。ファミレ~みたいな感じで。
歌詞が「会いたくて会いたくて」とある意味ネガティブ?なサビはベースが下がって行って、「もらった勇気を誇りに進むから」とポジティブな別れを感じさせるパートでベースが上がっていくんです。ファソラ~って上がっていくのが、ものすごく気持ちいい!!
また、この曲は田中美海さんとの声の相性がすごく分かりやすい曲でもあります。
0:38から田中さんの歌がずっと続く中で、ワンフレーズずつフランシュシュのメンバーが入れ替わりで彼女の歌に寄り添っていくので、2つの声が合成された時の響きを堪能できます。
個人的に感じた感想をちょっと。
♪たくさんの温もり与えてくれた(+本渡楓さん)
近い声質。本渡さんの方が少し低周波強めなので後ろに寄り添う感じ。
♪大きな優しさ教えてくれたの(+種田梨沙さん)
近い声質。種田さんは中周波が若干強いので、押し出す感じ。
♪この胸に空いた隙間は(+河瀬茉希さん)
少し硬めの声質。中~高周波が抜け、艶が増す。
♪埋まらないけど(+田野アサミさん)
近いけど硬い声質。芯が硬くなる。歌い方合わせて来てる。
♪今も今も暖かくて(+衣川里佳さん)
硬いのに暖かい声質。田中さんの声にない上下の補強。
こんな感じですかね。
みんなちゃんとリリィの歌い方に寄り添って、発声の仕方から変えてるからすげぇなぁ。これぞフランシュシュって感じやんか!
ちなみに2番のソロパートはそれぞれ自分の歌い方に戻しているという芸の細かさ。
レコーディングのディレクションが上手かったんでしょうな。
そんな感じでしょうか。あーちくしょう目頭が痛てぇ……。
特攻DANCE ~DAWN OF THE BAD~
こっちも別の意味でずるい曲w
こんなんライブで絶対ブチアガるキラーチューンじゃないですかやだーw
しかもフルバージョンの方が圧倒的に完成度が高い!
家に円盤届いた日、さっそく大音量で再生。
ある瞬間リアルにのた打ち回りました。
これをおらぼうでやれる奴らがうらやましすぎて。
ええ、たぶんみなさんも共感してくれる思います。
声上げろ!
足んねえぞ!
さあかきならせ
パラリラパラリラ
ここ!!
こ↑こ↓!!
……おっと危ない冷静にならねばおっさん通報されちゃう。
これ絶対ライブでみんなでやったら楽しいやつやん……。
歌詞
これ、歌詞の中身はほとんど無いですよね。サキのヤンキーポリシー歌ってるだけですw
(華の慶次より )
この歌のフルバージョンの真骨頂は途中の語りです。2:43からね。
諸行無常、栄枯盛衰。どんなものでも必ず死は来る。
TmDと特攻DANCEって正反対のようで、実は似たようなテーマなのかもしれません。
でもその答えがとってもサキっぽくて良いですけどねw
仲間が意思を継いでくれれば、それは生きている事と同じだ、みたいな。
しかし本当の死は、世の中から忘れられた時が二度目の死、みたいな事は昔から聞きますしね。
だからこそ、第8話。
昔のサキは麗子を信じて「(あとは)夜露死苦ぅ!!」と飛べたし(本人は死ぬ気なし)、
自分を覚えていてくれた麗子に、あの日と同じ言葉を笑顔で返せたんだろうね。
そして今度は無事戻ってくる。(生きているとは言ってない)
楽曲
音楽的には明らかにアレのオマージュなんで何とも言えませんがw
楽器編成がリアルにバンド編成で音が薄い感じもしますが、それが逆にいい感じのリアリティ効果になってます。
ただ一つだけ気になるのが1:30の2小節の空リピートは無い方がいいんじゃ?と思いました。その方が3:43の「永遠に~」がより映えた気がします。
最後に
田野さんとサキとの約束です。
これぜったい武道館でやろうぜ!!
って感じで夜露死苦!